いろいろな意味での面白い漫画や本に出合えるととてもうれしい。
今回おすすめしたい本は漫画。
「塀の中の美容室」である。

Contents
物語のあらすじ
週刊誌記者をしている芦原志穂。
仕事にプライベートに行き詰りつつある彼女にある取材を担当することになった。
「女子刑務所のウラの裏!(仮)」というものである。
週刊誌は人の裏側を面白おかしく描いていく。
女子刑務所ということでいろいろな事情で刑務所に入っている女の裏側・女の不幸を知れるはずということで上司から取材をするように言われたのである。
あまり乗り気ではないにしても仕事にはいかなくてはいけない。
刑務所内で受刑者が髪を切る美容室があるということでさっそく取材に向かうのである。
刑務所内の美容室
刑務所内の美容室ではお金を扱わないことになっているということで刑務所内の受付で先に料金の支払いを行うという。
金額は1000円以下。カットは900円、シャンプーは500円・・・とどれも安い金額なのだ。
店内での注意事項として、スマホや携帯電話の使用が禁止、ペットの同伴も不可、美容師との雑談も不可などと厳しいものがあった。
芦原志穂が訪れた美容院は職業訓練のためのもの。美容師の資格を取った受刑者が一般の人の髪を切るのである。
美容師は国家試験なので、それなりに刑期が長くないとしかっくは取れない。またハサミという刃物を使って一般の人の髪を切るという行為が危険ではないのかといろいろ疑いの目を向ける芦原志穂。
まずは、美容院を見てみてくださいと所長に促され、美容室に向かうのだった。
塀の中にポツンとある”普通”の美容室。
中には青空と雲が描かれた壁が広がっていた。

カットを担当する受刑者と初対面。
心のどこかで「重い罪を犯した人」というレッテルはそのままに席に着くのだった。
仕事とプライベートに悩んでいる志穂は思いっきり髪を切ることを決意し、受刑者である彼女に髪を切ってもらうのだった。
彼女の犯した罪
美容師の資格を取得した受刑者である小松原葉留。
彼女は恋人を刺し、殺人未遂の罪で入所しているという。
入所してから一度も髪を切っていない。
仕事のときはお団子頭にして作業をしている。
どういう思いで髪を切っていないのかは本人にしかわからない。
しかし、自分と向き合い罪を反省しようとしているのだった。
塀の中の美容室
一般の人たちも利用できる美容室ということで様々な人たちがいろいろな想いをもってその美容室に訪れる。
そこでの人間模様が描かれている。
髪の毛のパーツモデルをやっていた女性、夫に先立たれ1人で暮らす老婆、受刑者である小松原葉留自身のことや、犯罪者を持った葉留の家族・・・
訪れる一般人はやはり刑務所内の受刑者=罪を犯した人物ということで偏見や疑念の面を見せながらも美容室に訪れる。
そして、犯罪者を持った家族も受け入れたい気持ちと拒絶したい気持ちの間で悩みながら暮らしている。
そういう決してフィクションだけどフィクションではない姿を描いている漫画である。
刑務所内の職業訓練
刑務所内では、出所後に社会復帰を促すために刑務作業とは別に職業訓練があり、職業に関して免許や資格を取得することができる。
訓練内容は多岐にわたり、今回の漫画のような美容師や理容師、工場系のものや洋裁系、そして最近では民間委託された職業としてネイルアートなども行っている場所があるそうだ。
刑務所内の職業訓練の詳細
作業時間は8時間を超えないようになっているという。
作業に就いた受刑者には作業報奨金が支給されるとのこと。このお金は出所する際に受刑者に渡されるお金。また本人が希望すれば、家族へ送金したり刑務所内の買い物に使えるという。もらえるお金は1人1か月あたり約4340円程度とのこと。
この約4340円程度が安いか高いかの評価は人それぞれだと思うが、私は調べてて、正直これだけ!?という驚きだった。
犯した罪への贖罪と反省の意味があるという意見もあると思うが、社会復帰と自立を促す目的があるのであれば、もう少し金額を上げてもいいのではと個人的には思う。
目的は”社会復帰”と”二度と罪を犯さないように”。
近年、罪を犯した人への社会復帰を手助けする企業も増えてきているが、社会の目というのはまだまだ日本は冷たいと思う。
罪を犯してしまったというのはその人にとって一生付きまとうものであり逃げられない。しかし、それを本人だけの責任にしてしまっていいのか。
塀の中にいる方が安全ということでもう一度罪を犯してしまう人もいると聞く。
世の中他人に迷惑をかけずに生きていける人なんていない。
罪を犯した人をただ否定するだけではなく、本人自身をきちんと見つめ、サポートできる環境がもっと広がったらいいなと思うのであった。
「塀の中の美容室」おすすめの漫画なのでぜひ。
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