読書の秋。
普段は家事と育児に忙しい日々を送っているので、なかなか読書するにも優先順位が低くなってしまう。
子どもの絵本を探しに本屋に寄ったが、この本はタイトルを見た瞬間、子どもの絵本は買わずこの本を買ってしまった。
赤ちゃんポスト。
名前は聞いたこともあるし、存在も知っている。
その真実とはなんだろうか。
Contents
赤ちゃんポストとは
諸事情のため、赤ちゃんは産んだが、育てられない人が、この赤ちゃんポストに預けるもの。預けられた赤ちゃんは児童養護施設や特別養子縁組等で養母によって育てられる。
赤ちゃんポストは熊本県熊本市西区にある慈恵病院にある。日本で唯一のものである。病院では「こうのとりのゆりかご」とも呼ばれている。2007年に設置された。
赤ちゃんポスト自体は国外では多くあり、ドイツでは100か所あり、イタリア、オーストリア、スイスなどでも設置されている。
赤ちゃんポストの目的は”赤ちゃんの命を守るため”
望まない妊娠、虐待、貧困などで赤ちゃんが育てられない親は匿名で預けることができる。
育てられない、産んだことを秘密にしてほしい等という考えによる殺人や遺棄で失う命があるとしたら、預けることで赤ちゃんの命を救えるのだ。

”赤ちゃんの命を救う”とは
この赤ちゃんポストの概要だけを聞いていると、”赤ちゃんの命を救う”というパワーワードがあるため、思考が停止し、命を救えるなんてなんて素敵な取り組みなのかしら!と思うだろう。
私もこの本を読むまでは命に代わるものはないし、親が育てられないのであれば、だれかに育ててもらった方が子どもは幸せなのではないかと思っていた。
しかし、この本では”赤ちゃんの命を救う”という言葉の現実がかかれており、とても胸が締め付けられるような思いになった。
これは、実際に子どもを産み育てている時に読むのと、子どもを産み育てる前に読むのでは、感じ方は違っていたかもしれない。
何が問題なのか・・・。
赤ちゃんポストに預ける。ということは、預けられた赤ちゃんはいわゆる”棄児”。”捨て子”なのである。
また、親が匿名で預けることで、この赤ちゃんの名前はもちろん、出生の情報、戸籍が分からないことになる。
その名前の決定や赤ちゃんポストに掛かる費用等はすべて熊本市が負担し、熊本市長が名前の決定を行う。
赤ちゃんポストを設置をすることで赤ちゃんの命は救えるが、出生の情報がないとなると、預けられた赤ちゃんが成長し、自分の出生を知りたいと思った時にどうやって知るのだろうか。
子どもの権利に関する条約という国際条約がある。
そこにあるのは、子ども自ら「出生を知る権利」。
この赤ちゃんポストの取り組みだけだと、その出生を知る権利に反しているのではないかという話にもなってくる。
また、赤ちゃんポストに預けてくるとなると単純に貧困が原因として考えられるが、一概にもそうとは限らない。
赤ちゃんポストが設置されているのは熊本県熊本市。
赤ちゃんポストに預けてくる親の多くは九州ではあるが、中には、関東や近畿地方、遠い人で北海道から来る人までいるのだ。
わざわざ、飛行機代・新幹線代を払ってまで赤ちゃんポストに預けに来る人が本当に貧困であると言い切れるだろうか。
この書籍の中では、様々な事情で赤ちゃんポストに預けらた赤ちゃんの話や赤ちゃんポストに預けられた子のその後についても追っている。
そして、考えさせられるのはこの赤ちゃんポストの設置に関わった大人たちである。
赤ちゃんポスト自体は元々設置するのに賛否がある。
設置当時は安倍晋三内閣だったのだが、政府としては、赤ちゃんポストの設置に関しては消極的な反応を見せている。
自治体でお金をだし、運営をしているということで見て見ぬふりをしているという状態になっているのだ。
設置に関わる大人たちの思いはみな同じのように思えた。
”赤ちゃんの命を救いたい”
その想いのために立ちはだかる壁をどのように乗り越えていくのか。
根本の原因
根本の原因はなにがあるのか。
望まない妊娠にしろ、出産後の子育てにしろ、すべての責任が女性になっている気がしてならない。
本の中で出てくる赤ちゃんポストに預けた人の中には、10代で望まない妊娠をしてしまった人、不倫によって妊娠してしまった人等がいる。そのために誰にも相談が出来ず、相談が出来ないまま月日が流れお腹が大きくなり、病院で健診を受けることなく自宅や車の中で出産してしまうというケースもあるのだ。
その望まない妊娠をしてしまった時に1人で抱えきらないような方法を何か見つかれらるのが良いとは思う。
熊本の赤ちゃんポストのモデルになっているのが、ドイツでの赤ちゃんポストである。
ドイツ内でも赤ちゃんポストの設置には賛否があるようだが、ドイツ内で100か所ほど設置出来ている。
日本とドイツでの違いは望まない妊娠をしてしまった際の女性に対してのケア。相談窓口の充実ではないかと思う。
ドイツでは、預けられた際に新聞などで赤ちゃんの顔写真を新聞に載せて、母親が名乗り出るのを待つという情報開示に関してとてもオープンにしている。
秘密で出産し、預ける時は母親も気持ち的にパニックになっているので、少し赤ちゃんと距離をおくことで冷静になってもらうというのだ。
そうすることで、しばらくして赤ちゃんを引き取りに来たり、名乗り出る母親もいるのだそうだ。
日本と比べて支援・運営にかける費用は違うのだが、赤ちゃんの権利をしっかり守りつつ、母親も守られているように感じた。
この本の中では、赤ちゃんポストは決してキレイな優しい人たちの話ではないということを知ってほしいと思う。
何よりも望まない妊娠をすべきではないし、妊娠をしてしまっても母親をケアできる窓口が救えるようになっていたらと思う。
そういろいろと感じさせてくれるのが、この本である。

私なりの意見として上記にいろいろ書いてしまったが、ぜひ、多くの方に読んでほしいと思う。
本当に、赤ちゃんの命を救うとはどういうことなのか。
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